フィールドとアーカイブ

―社会理論と経験的社会研究
タルコット・パーソンズ後 50 年
あるいは、ある大学教員人生

 

16.媒体「身体」「言語」「人」
 経済システムへの研究展開とともに、社会システムそのものについて、パーソンズ、シュッツ、ルーマン、ハーバマスの思想と理論を咀嚼して、私の社会学を提案することになった。それが、『理論社会学 ―社会構築のための媒体と論理』(東信堂 2014年)である。


 その要点は、しばしば言われる「社会は、個人の集まりである」「社会の構成単位は個人である」という、いわゆる方法論的個人主義は、またそれに対する方法論的全体主義とともに、誤りだということにある。


 社会は、言ってみれば、つなぐ媒体から成っている。何をつなぐかというと、それは出来事であり、その出来事は、人間と関連することで、体験と行為であり、そのマトリクスを考えれば、体験と体験、体験と行為、行為と体験、行為と行為という連関を可能にしていく媒体があり、その種類を明瞭にしていくことで、社会システム、言い換えれば、社会はどのようにありうるかを言うことができるというロジックで明瞭になる。


 パーソンズ、シュッツ、ハーバマス、ルーマン、どの人にも「メディア」は概念として登場してくるが、これを徹底的に体系化して整理しつつ、発生している世界社会、日本社会の諸問題を題材に論じたものである。


 本書は、2015年度から文化構想学部社会構築論系の私のゼミナール、3年生春学期の必読教科書として使用していった。個人が、社会を変えることはあるが、その個人は、どのようにありうるかは、さらに溯って論じることが不可欠だということである。
この『理論社会学』は、たいへん面白く光栄なことに、2015年度のさる私立大学の入学試験「国語」の長文問題にも使われることがあった。

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◇「消えゆく前に ―ウィーンの森の物語」から◇

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