フィールドとアーカイブ

―社会理論と経験的社会研究
タルコット・パーソンズ後 50 年
あるいは、ある大学教員人生

 

2.構造−機能主義と地位−役割理論
 時は、パーソンズが掲げた「構造―機能主義」全盛時代から少し陰りが出始めていた頃。学説史で知られているとおり、1937年の『社会的行為の構造』では、この主義への展開はない。そうではあったが、その時代、信奉者の多かった「構造―機能主義」、その基本枠組である「文化的価値と地位―役割」の配置関係、それをもとにした社会成層の経験的研究についても関心を持った。


 同時に、『社会的行為の構造』で提示されようとしていた行為の一般理論が、実は、そんな程度のものが成果、結論なのかという疑問があった。「文化的価値」と称して、日本社会のそれ、アメリカのそれ、ドイツのそれとして、わかったようでわからない「文化的価値」という言葉を怪しんだ。時は、「日本人論」全盛の時代でもあった。

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 日本での、この領域での代表者は、東京大学の富永健一先生であり、先生の著作を大いに読み学んだ。しかしながら、いわゆる「社会階層・社会移動の研究」、とりわけ主要な三要素(職業、所得、学歴)で地位役割を位置づけていく、言うなれば大変オーソドックスな構成には、それは不平等関係の後付けではないかと、あまり興味がなかった。


 第一次産業従事者が減少し、いろいろな種類のサラリーマンが増えるというのも、そんなことは、発見でもなく、みんな知っていることだろという思いがあったし、「所得」は扱うが、「資産」は調査でデータを得るのは難しいと、当初から外されており、そこに問題とすべき本質が問われているのかという思いが、今の今に至るまである。

 


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◇「消えゆく前に ―ウィーンの森の物語」から◇

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